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KEN HASEBE

「発想人」の視点

長谷部 健

渋谷区長

_ PROFILE

博報堂勤務を経て、ゴミ問題に関するNPO法人Green Birdを設立。
2003年、渋谷区議に初当選し、数多くの斬新な施策を立案、実現させる。区議3期を務めた後、2015年より現職。
‘渋谷のプロデューサー’として街づくりに邁進している。

街のプロデューサーとして、世の発想を集め、具体化する

広告業界から政治の世界に飛び込んで、最初は戸惑いも感じたし、異質さに身構えてもいました。でも、1~2年して、意外と違わないんじゃないかと思い始めました。クライアントが企業から区に変わり、区民をターゲットとしてアイデアを出すという構図は一緒だ、と。生活者のど真ん中にいて発想していくことは、政治の世界に一番欠けていることだと気づいたし、かえって広告業界で培った経験や手法が活きるのではないかと考えるようになった。そこは発想の転換です。

僕は博報堂時代、「営業はプロデューサーたれ」と言われて育ったように思います。関係する多種多様な人をまとめながら、仕事を着地させていく。当時、CSRや環境問題等、ソーシャルな課題が注目され始め、広告においてもソーシャルなものが評価されるようになっていました。そんな時代の風を感じて、ソーシャル・プロデューサーになりたいと思い始めたのが現在への布石になっています。世の中には優れた発想を持っている人がたくさんいる。そんな世の発想を集めて実現にこぎつけ、少しでも社会をいい形にもっていきたい。いわば街のプロデューサー。そう意識して、いまも活動しています。

政治の世界で企画を考える

区議会議員の主な仕事は、条例をつくり、区の仕事を監査すること。でも、区議になって気づいたのは、条例がなくてもできることはたくさんあるということ。それなら、企画を考えればいいんだと、発想を広げました。

表参道のイルミネーションを復活させましたが、あれも条例によるものではありません。スポーツ振興についてもそう。スポーツの語源を調べるとラテン語のデポルターレ(deportare)だとわかった。発散する、気晴らしするという意味らしい。スポーツ施設自体の拡充ができないなら、観戦して発散することもスポーツになるんじゃないかと、発想を変えました。そこで神宮球場を本拠としているヤクルトスワローズに話を持ち掛けて、区内の子どもたちとの交流を実現させる等、スポーツと触れ合う機会を増やした。広告手法のタイアップに近いかもしれせんが、スポーツ振興という概念からは少しはみ出した発想ですね。要は、面白そうで有意義な企画を考えること。広告の世界では日常的に行っていたことを、いまも続けている感じです。

当事者以外の視点で見る

世の中にはゼロから1を発想できる発明家のような人と、その1を10に花開かせる人間がいるとしたら、僕は後者ですね。種は周りにいる色んな人からもらっている。これまで実現してきた施策に対して、よく発想豊かなアイデアマン的な評価もいただくのですが、一人で生み出したものはほとんどありません。たとえば区内の様々な施設で学びの機会を提供する「シブヤ大学」は、イラストレーターが描いた絵を見ながらブレストしていて、「これってキャンパスに見えない?」から「大学だ!」となって、どんどんアイデアが広がっていった。

LGBTの人たちに「パートナーシップ証明書」発行する条例の場合も、初の試みとして評価されましたが、社会的な動きとしてあったものです。ただ、僕がやったのは、当事者以外の視点で見ていくこと。渋谷の街づくりにとってどういう意味があるかを考え、そうした意義を付与することで実現にこぎつけました。当事者の気持ちは切実です。そこに寄り添うことは人間として大事なことですが、別の視点を加えることは大切なステップだと思います。

嗅覚を磨く

条例であれ、条例以外の企画であれ、それが社会に受け入れられ、歓迎されていくのかどうか、その判断が大事です。その時の判断基準の大きな要素として、「社会の情勢はどうなのか」があります。いま人々はどういう方向に動いていこうとしているのか、そこを掴む。そのための嗅覚が必要だと思います。「いまはまだ斬新な発想だけど、必ず受け入れられるようになる」というものを感じ取る力ですね。その点に関しては、少し自信がある。それが自分にとっての発想力と言っていいかもしれません。

嗅覚を磨くためだけではないのですが、人の話はよく聞きます。特に、自分が関わっている物事とはあまり関係のない人と話すことは有意義だと感じます。懸案事項にどっぷりと入り込み過ぎないように意識している…と言うとカッコイイですが、注意散漫な人間なんですよ(笑)。でも、あるテーマで議論しているときに、ふと別の機会に誰かが話していたことを思い出して、それがいい発想につながることもあれば、逆に別の事案の解決策を思いつくこともあります。雑多な情報、多種多様なものの見方を知ることは発想に役立っていますね。

照れずに発想ができる国に

政治家に限らず、広告界でもそうだと思うのですが、サイレント・マジョリティのマーケティングができていない。いい社会をつくるためには、声を上げない人の気持ちを取り上げていかないと…。だからこそ、僕はルール以前にモラルに問うべきだと考えるのです。規制だけで社会を変えていくのは非常に困難です。もっと人が自発的にコミットして、社会をよくしていけたならそのほうがいい。Green Birdはゴミ拾いを行っていますが、根幹は、「ポイ捨てするのはカッコ悪い」という意識を持ってもらうこと。そんな雰囲気、空気を社会に醸成させたいと思って活動を始めました。みんなそうしたモラルは持っていると思うんですよ。でもそれが素直に世の中に現れない。電車で席を譲るのはやはりどこか恥ずかしいところもある。いいことをしたいのに、なんか照れる。いい発想なんだけど、うまく外に出せない。その雰囲気を変えたい。

博報堂時代を振り返ると、周囲には発想豊かな人が多かった。いま政治に求められているものは、その発想力です。僕自身は発想体質には程遠い人間ですから、発想体質にしてくれる場があるなら、僕が行きたい(笑)。僕に限らず、実は、そこがこの国のウィークポイントなのです。できる人はいっぱいいるはずです。ポテンシャルはあると思う。でも、照れてるんだよね。照れずに発想していける国は面白い。そんな国になれるよう、まずは渋谷からプロデュースしていけたらと思っています。

Photo:Yoshiro Hayakawa

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